愛なんて(※R15指定/官能長編作品)

官能作品

 

『愛なんて』

 

「エミルの“好き”と俺の“好き”は、たぶん違う気がする」

高1の冬、元カレのコウキはそう言って私をフッた。
“好き”が違うって何。
そんなの他人同士なんだから違って当然じゃん。
別に良くない?
キスだってセックスだって、しっかり興奮してたじゃん。
貪るようにして私を抱いたじゃん。
あの時切なげに漏れた“好き”って、
いったい何だったの?

ねえ、なんで?
なんで?

 

あれから7年。
私は約束や肩書きのある関係を誰とも作らないようになった。

「んあっ……そ、こ……」
「ん?気持ちいい?」
「んんんっ!や、だめえっ……!!」

ヒロの指先が、私の敏感な場所を執拗に責める。
もう1時間近く。
いったい何度、登り詰めただろう。
汗と愛液まみれになった私は3回のセックスの後もこうして脳が空っぽになる位、深く快楽に身を委ねていた。

 

「エミルってほんとエロいよね」

4回目が終わったあと裸のままベッドの上でスマホを見ている私に、ヒロが囁く。

“エロい”

過去関係を持った男たち全員が私の事をそう言った。
たった1人を除いて。

「そ……?」
「うん……数えきれない位女を抱いてきたけど、こんなに相性いいヤツ初めて」
「なに、武勇伝でも語り始める気?」
「ははっ、こんなの武勇伝になるかよ。……オマエは最高のセフレって言いたいんだよ」
「“セフレ”、ねえ……」

セックスが好きだ。
それをしている時だけ、余計なことを考えなくて済むから。
余計なことっていうのは、そう……
私という人間とか人生とか、愛、とか。
うん、一番吐き気がするのが“愛”って言葉。
そんな実体のないものにすがるなんて、バッカみたい。
どうせすぐ壊れるのに。

チラリと裸のままタバコを吸うヒロを見つめる。
おそろしく横顔が綺麗な男。
鼻筋が通っていて、顎、首筋から鎖骨にかけてのラインが完璧。
余計な脂肪がない、鍛えられた筋肉。
でもやり過ぎていない程よい細さが残ってる。
そして最高なのが、27歳とは思えない体力。
持続力も回復力も、まるで10代だ。

ヒロとは1年前にマッチングアプリで出会った。
ヤリモクだった。
ただ、するだけで良かった。
モチベが上がる容姿と体型、そして
満足できるだけの体力があれば、誰でも良かった。

出会ったその日にセックスをして、
相性の良さを確認し合ってからは
お互い定期的にしたくなったら会ってセックスをする。

そう、セックスだけ。
愛なんてものは一切存在しない。
すごく、ラクだ。
恋愛に必要な駆け引きとか、
他の異性の存在を気にしたりとか、
互いの過去の話とか、
未来への希望とか、
そんなものを必要としない。
しなくても許される。
ただ、セックスができたら合格なのだ。

……妙に心がざわつく。
暴力的な感情が私を支配し始める。
ああ、まただ。
堕ちていく。

私は寝転ぶヒロの上に裸のまま跨って、一気に彼を迎え入れた。

 

「……っ」

彼は突然のことに一瞬顔をしかめた。
私はお構いなしに激しく上下に動く。

何も考えたくない。
だれかを愛するとか
だれかに愛されるとか
そんなの全部どうだっていい。
私は私の為だけに生きていく。
誰かに期待したって、いつか必ず裏切られるんだから。

 

私はどうせ、

誰からも

愛されないんだから。

 

蘇る記憶たち。
もう忘れたいのに、自分にとって都合の悪い記憶こそ、ずっと脳の裏側にこびりついて、消えてくれない。

14歳の時、母が父と離婚した夜にポツリと言った。

「あんたが産まれなければ、私はもっと幸せな人生を歩めたのに」

親友のヒトミが彼氏を繋ぎ止める為に切った手首の傷跡。
その場所をギュっと掴みながら、涙を溜めて言った。

「結局、あたしが信じていたものはただの幻想だったよ」

元彼のコウキが泣きながらすがる私に、
心底ウンザリする顔で言った。

「もっとサッパリしたヤツだと思ってた。ごめん、なんかもう、手に負えない……」

ダメ。
愛なんて信じちゃダメ。
誰も許しちゃダメ。
誰も受け入れちゃダメ。

子宮の端っこにズンズンと痛みに似た快楽が走る。
ああ……壊れちゃえ。
私なんて、壊れちゃえ。

遠くで私を呼ぶ声がする。誰?

「……エミル!」

ヒロが私の腰を両手で強く掴みながら、名前を呼ぶ。
ハッと我に返った瞬間、私の両目からは熱い液体が流れ落ちていた。

「……あ」

咄嗟に両目を手で拭う。
だけどそれは止めどなく溢れ出し、
ヒロのおへその上にポタポタと落ち続ける。

「……どうした?なんか、あった?」

いつになく優しい声でそう言いながら、ヒロは私の頬を撫でた。
もう止まらなかった。
先に流れていた涙に気持ちがやっと追いつく。
私は顔をくしゃくしゃにして、大きな声で泣いた。
まるで、迷子になった幼い子供みたいに。

本当はわかっていた。
心の中にポッカリ空いた暗くて深い、真っ黒な穴を埋めることができるのは
実体のないアレだってこと位。

だけど私は一人。
今も、これからもずっと。
だって私は私のことが嫌いだから、
そんな私を好きなんて言う人、愛せるわけない。

泣き声が嗚咽に変わり始めた時、
冷えた身体が急速に温かくなっていくのを感じた。
自分より大きな身体が私を包んでいる。

誰?
ああ、ヒロ、だ。
ヒロが、私を抱きしめてる。
温かい。
きもちいい。
でも、なんで?
ただのセフレなのに、なんで?

「何があったか知らないけど、泣きたきゃ泣けよ。そんで、さ、全部出しきったら……とりあえず一緒に朝飯食いに行こうぜ。セフレの俺とで良ければ、だけどさ。聞くだけ聞いてやるよ。オマエが今溜め込んでるヤツ、ぜんぶ」

心の中に張り詰めていた無数の糸が
プチプチと切れていく音がする。
その先に一本の光の道が見える。
とても細い道だけど、暗闇に刺す光は
たった一本なのに無限の可能性を秘めていて
どこまでも歩いていけそうな気がした。

行ってもいい?その先へ。
いいんだよ、まだ、遅くないよ。
でも、怖いよ。
怖がらないで。
また、傷つくかも。
きっと大丈夫。
ほんとう?
うん、たとえ傷ついたとしても、きっと……

私はヒロの首に手を回して
彼の温かい体温ごと、ギュッと抱きしめた。

きっと上手くいかない。
セフレだった人と愛し合うなんて、たぶん無理。

だけど、私はこの人に伝えたい。
聞いてみたい。
私自身のこと。
ヒロのこと。
過去のこと。
未来のこと。

今は、それでいい。
きっと明日になれば今よりもっと、私のことを好きになれる。
そんな気がするから。

 

End.

 


 

セフレ関係を続ける女の子を書きたいなって思って書き始めたら、なんだかすごいディープな内容になってしまい、その上文字数もいつものことながら長くなってしまい、結局ブログ限定公開となりました!!(なんだかお約束になってきたw)

私の元にいまだによく届く、セフレについて悩むDM。あまり周りには言ってないけど実は……って人、結構いるんですよね。

その内容は様々。セフレ相手のことを好きになってしまって本命彼女になりたいけど相手が本気じゃないからセフレ関係を続けてしまっていて辛いという内容だったり(これが一番多い)、本命の人(セックスレス)と上手くやっていくために必要だからセフレを割り切って作っているという内容だったり……(これに関しては既婚者が多い気がしてます)

今回のお話はちょっと現実にはなさそうな内容かもしれないけど、一部の方に突き刺さるのではないかと思い、書いてみました。

主人公は自分を好きになれない女の子。過去の経験から愛に飢えていて、それゆえに内面のコンプレックスが酷くなり、自分を大切にできなくなっていきます。
人はみんな、少なからずコンプレックスって持ってると思うけど、それでも幸せになりたいと願うもの。だからコンプレックスを超えていこうとしたり、受け入れようとするんですよね。

でも中にはそのコンプレックスが強すぎるゆえに、こんな自分はどうせ幸せになれないと決めつけて、無意識に幸せから遠ざかろうとしてしまう、なんてこともあるんじゃないかなって。

だからせめて、自分だけは自分を認めてあげてほしいって思いました。(今回のお話ではセフレ君が最終的に寄り添ってくれたんだけど)

結局のところ、愛っていうのはまず自己愛からだと思うんだ。
自分を愛せてこそ、人を愛せる。
自分を認めてこそ、人を認め、その先に進める。

誰に愛されなくても、まず自分だけは、自分を愛してあげてね。

 

 

ジャムウ 記事LP

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