6年後の答え(※R15指定/官能長編作品)

官能作品

 

『6年後の答え』

未来の私に一つだけ言えることがあるなら
これだけは言っておきたい。
別れる相手と最後のセックスなんて、やめておけ。

「結婚を前提に付き合ってほしい」

取引先の岡田智康は最初から私を見る目がどこか熱っぽかった。初めてデートに誘われた時、いつかこうなる予感もあった。何度か2人で出かけて、最後の別れ際。唐突に言われたその一言で、私は“結婚”から1番遠い場所にいたのだと思い知った。

6年。それは、佐原恭平とセフレ期間だった年数。同時に、私が仕事に情熱を燃やした年数でもある。
恭平とは出会ったその日にセックスをした。驚くほど身体の相性が合う相手だった。またこの男とセックスがしたいと思った。そして彼もまた、全く同じ気持ちだった。
恋人にならなかったのは自然な流れだった。お互い仕事が第一で、恋愛の優先度が極端に低かったからだ。月一位のペースで会ってセックスをする。会う時は恋人のような甘いこともするけれど、束縛も約束も責任もない、ぬるくて心地よい関係。普段思い出しもしない孤独や虚無感がたまに襲い掛かった時に、少しだけ空いた隙間を埋めてくれる都合の良い関係。

友達に呆れ顔で「そんな関係空しくないの?それで紗耶香は幸せになれるの?」と言われた時、返した答えは「どうなるかなんて今はわかんないけど、いつだって私の幸せは私の心が決めるよ」だった。

ついにこの関係を終わらせる時が来たのだと、妙に物分かりのよい子供のように自然と察した瞬間だった。恭平に別れを告げると、彼は笑いながらどこか寂しげに言った。

「なんか“別れる”っていうのも変な話だな。付き合ってもないのに」

胸がチクリと痛む。

「そろそろ私も結婚とか考えないとさー、親もうるさいしね。ここいらで重い腰を上げてみようかなと。一応、返事は待ってもらってるけどさ。こんな状態じゃ不誠実だし。そこはちゃんとしなきゃ的な」

言いながら心拍数が高まっていくのを感じていた。何か大きな間違いを犯しているような気分になる。無駄に湧き出る言い訳じみた言葉は、いったいどこに行き着こうとしているの?

「相手はどんな奴なの?」
「……すごく真面目で、優しい人だよ」
「そっか……。そうだよな。お前ももう、30だもんなあ。良かったじゃん!心から祝福するよ。ま、でも……俺はまだいいやって感じだけどさ」

大きな手が頭の上に置かれた。恭平はいつも、何かあると私の頭を撫でた。まるで家族や恋人にするそれのように、どこか愛おしげに。

胸の痛みと共に、さまよう言葉たちの中から一つの強い意志を持った言葉が飛び出す。

「……最後に、やっとく?まだ一応フリーだし」
「え、でも……大丈夫なの?」
「なにが?」
「や、だって。なんつーか、そういう時にしちゃうのって、逆にアレっつーか」
「ふっ、言ってる意味わかんない。いいじゃん、やり納めだよ。6年間の歴史に終止符を打つ一本締めみたいなもんでしょ」
「ははっ、紗耶香はホント、いつまで経っても変わんねえな」

恭平は笑顔のままゆっくり私に近づいて、おでこにキスをした。そのまま頬、耳たぶ、首筋と、優しくキスを落としていく。まるで6年の時間を埋めていくように、ゆっくり、じっくりと。

唇同士が重なる瞬間、初めて彼の味をちゃんと知りたくなった。ねっとり厚みのある舌は私の舌を越えて、激しく奥の方へ進んでいく。セブンスターの香りが口内に広がり、その後ほんのりシトラスが追いかけてくる。この6年間、数えきれないほど交わしてきた唾液の交換。いつの間にか、私にとってキスはこの味になってしまっていた。
私も彼の中へ入っていく。ピチャピチャという唾液の音がシンとした部屋に響き渡り、聴覚が甘い刺激を受ける。舌と舌がまるで不器用な社交ダンスのように上下左右に絡み合う。もう……何も考えられない。

私は恭平を押し倒した。彼は一瞬動きを止めて目を見開いた。そんな彼の反応で、私から押し倒したのがこの6年間で初めてだったことに気付く。荒ぶる呼吸のまま、彼の首筋に舌を這わせる。そのまま彼のシャツを脱がしていく。

「はあっ……はあっ……」

酸欠になりそうな位呼吸が激しくなっていく。下半身が洪水のように濡れているのが分かる。ピリピリとした快感の塊が身体中を侵していく。私は、過去最高レベルに欲情していた。
突如、彼を支配したい欲求が沸き起こる。無意識に手を下の方へ滑らせる。片手で彼のズボンのチャックを下げて、閉じ込められてきつく苦しそうな彼のものを外へと解放した。ピンク味を帯びた固くせり上がったそれを、私は優しく握り、そっと口に含ませた。

「ああ……紗耶香……」

溜息混じりの甘い声が聞こえる。そのまま奥まで咥え込み、強く吸い付く。吸い上げると同時に先端を舌で軽くなぞる。何度も何度も同じ動きを繰り返す。じわりと口内に塩気を感じ始める。恭平は私の頭を両手で抱え込んだ。

「紗耶香、止めて……ヤバい、イっちゃいそう」
「イっても……いいよ……」
「やだ、お前の中でイきたい」

そう言って私から強引に腰を引き、私を下に組み敷いた。そのまま勢いよくショーツを脱がし、湿り切ったその場所に顔を埋めた。ドクンという心臓の音と共に、強烈な快楽が私を支配した。既に触れられることを待ちわびていたクリトリスが、熱い舌先でゆっくりと転がされる度、膣から熱い液体が溢れ出す。恭平の長い指が私の中に入り込む。愛液が潤滑液となって彼の指を奥まで一気に飲み込んだ。出し入れされる度、お腹の下の方にこそばゆい快感と甘いざわめきが広がる。舌は執拗に敏感な部分を刺激し続け、指は下まで降りてきている子宮の端っこを何度も押し上げた。やがて唐突に大きな快感の波が襲ってきた。全身が焼き尽くされるような熱に包まれる。身体中を渦巻く大きな欲望が1つ残らず吐き出される。

「あああああっ……!!!!」

私は深いオーガズムの沼に堕ちていく。恭平は汗だくのまま身動きとれない私の乳房を両手で包み、先端部分に優しくキスを落とした。まだ全身性感帯状態の私の身体は、そのキスだけで反射的にビクっとした。彼は即座にズボンを下着ごと脱ぎ、コンドームを装着した。ボウッとなった脳の片隅で、「ああ……そういえば恭平は一度たりとも避妊せずにしたことなかったなあ……」と思っていた。それは彼の誠実さでもあり、最大限の防御でもあったのだ。何があっても間違いは起きてはならないという強い意思は、一度も揺らぐことはなかった。

「紗耶香、入れるよ?」
「……うん、早く、きて」

彼は一気に貫き、私を満たした。思わず、獣のような呻き声が喉の奥から吐き出された。首をのけぞらせながら、容赦なく侵略してくるその感覚に意識を集中する。ちらりと彼に目をやる。彼は切ない眼差しで私を見つめていた。ああ……なぜそんな目で私を見るの?

恭平と初めてした夜、彼の「こんなにしたの初めて」と言って照れ笑いした顔が、どこか初恋の人に似ていてドキッとした。
3度目の夜、した後2人でホラー映画を見た。井戸から出てくる白い服を着た女の姿に驚いて、半泣きになりながら彼にしがみついた。彼は初めて私の頭に手を置いて優しく撫でた。
10度目の夜、彼が唐突にベッドで寝転びながら写真を撮ろうと言った。私は「こんなスッピン恥ずかしいよ」と言って顔を隠した。彼は笑いながら私の手を強引につかみ、じゃれ合いながらブレブレの自撮りツーショットを撮った。それが最初で最後のツーショット写真になった。
2年目のクリスマス。「本来恋人と過ごすこんな日だけど、俺たちは悲しいことにお互い独り身であります。そこで提案です。チキンもケーキも無しで、”クリスマスなんてクソくらえファック”をしませんか」そんな、ふざけたスタンプと共に送られてきたLINE。笑いながら秒で返信「乗った」。その夜は史上最多の6回コースだった。
三十路前夜。「20代最後の夜はセフレらしく夜景の見えるラグジュアリーホテルでしよう」と提案した。向こうが全額出そうとするのを振り切り、きっかり割り勘で楽しんだ。バスローブでワインを飲みながら夜景を見下ろし、2人で金持ちあるあるコントを繰り返す。楽し過ぎてセックスに突入したのは朝方だった。

まるで走馬灯のように彼との思い出が溢れてくる。もしかしてこのまま死んじゃうのかな。これは、本当に走馬灯なのかも。恭平が私を見て、驚いた顔をした。指がそっと目元を拭う。

「なに泣いてんの……」
「え?私、泣いてる?」
「うん……痛かった?」
「まさか!めっちゃ気持ちいいし、やめないで」
「でも……」
「いいの、ちょっと感傷に浸っちゃっただけ。気にしないで」

そう言って自ら彼を深くまで招き入れた。彼は強い締め付けに声を漏らし、また激しく腰を動かした。これで最後。もう二度と、恭平としない。これは私が選んだ道。大丈夫、だってべつに愛してなんかないんだから。ただのセフレなんだから。自分に言い聞かせる。何度も何度も。

絶頂に近づく。私は苦痛と紙一重とも言えるような激しいオーガズムに身を委ねた。と同時に、彼は呻くような声を吐き出しながら、私の上にのしかかった。ベッタリとした汗が私の汗と混ざる。恭平はまだ呼吸が荒いまま、小さな声で囁いた。

「……愛してるよ」

驚きで耳を疑った。聞かずにはいられない。

「どういう意味?」
「……深い意味はないよ。ただ、言いたくなったから」
「なにそれ」
「愛してるの意味なんて、知ろうとしなくていいんだ。ただ1つだけ言えるのは、お前には幸せになってもらいたい。……幸せに、なれよ。紗耶香」
「恭平……」

それ以上は声にならなかった。涙が、まるでダムが決壊したかのように止めどなく溢れてくる。こらえ切れない嗚咽が哀しみを帯びたまま、部屋の中に響いていた。
恭平は私が泣き止むまでずっと裸のまま私を抱きしめ、優しく頭を撫で続けた。

あの時友達に言われた言葉を思い出す。6年後の今、答えは変わっていた。
恭平といた時間、私はとても幸せだった。満たされていた。永遠の約束なんていらなかった。ただその瞬間の愛しい想いが私の全てだった。それは今だから分かる、今だからこそ出せる答えだった。

ただ1つだけ、もし時間を戻せるなら……最後のセックスはするべきじゃなかった。私はあの日爆発した感情に、まだ囚われている。その先に進めずにいる。
結局、岡田智康の申し出は、好きな人がいると言って断った。そして、恭平ともあの日を境に会うことはおろか、連絡すらしなくなった。

この選択は間違っていたのだろうか。そう思う度、自己嫌悪で自分の存在ごと消したくなる。
でも次の瞬間、感じるのだ。きっとこれは、大切なことに気付くために通らなければならない道だった。しなければならない選択だったんだって。恭平への想いは愛だった。どういう形であれ、私にとって愛以外の感情を見つけられなかった。失って気付いた。失ったから気付けた。心から愛する人がいたことは、いつかの私をきっと救ってくれる。だから、進もう。全てを無駄にしないために。あの人との時間を優しい思い出に変えるために。

End.

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4500文字(原稿用紙12枚分!)という、いつもより長めの官能小説でした!!
普段文章慣れしてない方は途中で挫折しちゃってないか心配ですが、最後まで読めたかな?笑

セフレ関係が終わる時って、きっと様々なドラマがあるんだろうなって思っていたのですが、そもそもこの物語が生まれたきっかけは、69歳の知り合いの女性が話してくれた1つのエピソードでした。

彼女から、15年セフレ関係だった人と別れて14歳下の恋人ができたという驚きのお話を聞きました。15年間セックスだけの関係だったその相手は、最後に「愛してる」と一言告げて消えたそうです。その言葉にどんな意味があるかなんて想像するしかできないけど、きっとその人にしか語れない15年の想いがきっとあったんだと思います。

この物語の中で恭平が最後に「愛してる」という言葉を発したのは、その瞬間たしかにそう感じたからで、それ以上でもそれ以下でもないんだと思います。セフレ関係でしかも最後の最後にそんな言葉、なんかずるい!って思う人もいるかもしれない。でも私は、もしかしたらとてつもなく純粋で誠実な言葉なんじゃないかなって、ここまで書いてみて、個人的に感じました。

今回の物語は文字数オーバーというだけではなく性描写が過激だったので、後半はブログのみの公開とさせて頂きました。(こんなのInstagramで公開したら確実に即日削除されるよね)また、R15指定とさせて頂きました。

Instagramから見に来てくれた方、最後まで読んでくれてありがとう!感想はコメントやDMでお待ちしてます♪みんながこれを読んでどう感じるのか気になるので、是非!感想聞かせてね!!!!

 

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