欲し続けた場所
『欲し続けた場所』
「あっ……」
「気持ちいい?」
「ん……多分……」
「多分?」
「うん……でも……きっと」
これが、快楽というやつなのだと今、身体中で感じていた。
*
数分前ブラジャーのホックが外された瞬間、なんとも頼りない感覚が胸元を襲い、思わず両手でその場所を隠してしまった。彼はその手をグイッと頭の上に掴み上げ、重力に負けて横に流れてゆく柔らかい塊を、もう片方の手で揉みほぐした。男の手でその場所が弄ばれる感覚は、ひどく屈辱的で、めまいがするほど官能的だった。
私は、自分の中から漏れる甘い声と吐息にドキドキしていた。なぜなら……
こんな声を出す日が来るなんて、34年間生きてきて想像もしなかったからだ。
34歳、独身。
それだけ聞いても今の時代、「そうなんだ」で終わる話。でも、それに「処女」という肩書きがついたら?きっとみんな、そっと目をそらすに違いない。
始まる瞬間、本当は怖くて逃げ出したかった。でもそれ以上に、ああやっとその先に行けるのだと深く安堵した。
愛なんてなくてもいい。幸せな未来なんていらない。ただ長く持て余し続けた私という哀れでちっぽけな存在を、誰かに丸ごと受け入れられたかった。
想像を遥かに超えた快感に屈しながら、私は目撃していた。長年私の内側で、ずっと覚めない夢を見ながら眠り続けていたものを。この世界に生まれ出たいと懇願し、不確かなものに囚われ、他の誰でもない自分自身に蔑まれてきたその存在を。
押し広げられる衝撃的な痛みは、溶け合う体温で緩和される。彼はその瞬間、全てを察した。それでもなお、まるで長年連れ添った恋人にするように、私の唇に熱いキスを落とした。
「好きだよ……」
彼が吐息と一緒に耳元で小さくつぶやく。
視界がぬるくぼやけていく。
ああなんで私は今、こんなにも幸せなの?
愛なんて幻想に過ぎないのに。自分以外の誰かに弱さを見せてしまったら、委ねてしまったら、もう元の場所には戻れないのに。
私は彼に強くしがみつき、泣き崩れた。
やっと泣き場所を見つけた子供のように。
end.
やっと書けたテーマ。
ずっと前からリクエストがあったのに書けずにいたのは、きっとそこに本気で感情を乗せないと、今まさに悩んでる方を傷つけてしまうと思ったからだと思います。
本当にデリケートなことなんですよね。経験していない、という事実は周りが思う以上に、年々重い荷物になっていくんです。私はそんな人たちの声を沢山聞きました。誰にも言えない。自己肯定感がどんどん下がっていく。何をしていても、それがあるだけで世界が暗く感じる。いっそ誰でもいいから…
苦しい叫び声は私の胸を深く突き刺し続け、本気で向き合わなければ、書かなければと、何かに追い立てられるように今回筆が動きました。
正直、これに関して正しい解決策は分からないです。ただ私が伝えたい事は、それが人生の全てではないという事、本来平均年齢なんていうものを割り出す必要がないという事。それは人間の価値を下げる事ではないです。人と比べなくていいんです。幸せは心の有り様だと、いつだって私は思ってます。
【補足】
Instagramに投降した作品ですが、案の定18歳未満は反映されなくなってしまったので、まだ見れてない方の為にブログ掲載しました。とはいえアダルトフィルターがかかったスマホですと見れない可能性はあります(私のブログ自体)。その場合は、18歳になるまで待っててね!!いつかきっと見て欲しい作品です。
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